子宮頸がん(HPV)ワクチンの接種について
厚生労働省として、来年度からの積極的な勧奨の再開を決定(令和3年11月26日に健康局長通知を発出)されましたが、1月27日(木)厚生労働省予防接種基本方針部会において、キャッチアップ接種について議論が行われました。
(キャッチアップ接種とは、※HPVワクチンの積極的な勧奨の差し控えにより接種機会を逃した方への対応となります。)
部会での資料【資料1】HPVワクチンについてによりますと
現時点では
・対象者 H9年度生まれ~H17年度生まれの9学年
・3年間(令和4年4月~令和7年3月)
・令和4年4月1日~予防接種法施行令(政令)の施行
の予定となっています。実際の自治体からの詳細についてはこれから協議されていくと思われます。
当院の方針としては、以下の点を皆様に考えていただいて、ご自身にとって何が有益か考えての上での接種をお願いしたいと思います。
論点
・ワクチンの副反応での死亡はほぼないが、
子宮頸がんでは死亡もあり、場合によっては妊娠の中断・女性器の摘出などの女性としての機能を考えなければならないこともあります。
・ワクチン以外で防ぐ方法は子宮がん検診であるが、婦人科に2年に1回行かなければ効果に乏しい。(若いほど進行が早いことが多い)
実際に受診率は非常に悪い(20代で26%)。
・感染経路が性交渉であるため、男性にも積極的に接種している国もある。
性行為感染症(STD)の基本は男性も女性も同時に対応することです。
(日本は以前、中学生女子のみに風疹ワクチンを接種して、結局感染制御を行えませんでした。)
・感染経路が性交渉であるため、適正年齢になる前に接種がのぞましい。
思春期ではなくもっと前に打つことを考慮してもよいのではないか。(B型肝炎ワクチンのように)
・日本の定期接種では2価と4価ですが
世界では9価のワクチンも発売されております(2014~)。日本でも自費で接種できるようになりました(2020~)。
肺炎球菌も7価→13価になっています。
・ 「日本の女性を子宮頸がんから守るための声明」 日本産科婦人科学会など
・Potential for cervical cancer incidence and death resulting from Japan’s current policy of prolonged suspension of its governmental recommendation of the HPV vaccine
Scientific Reports volume 10, Article number: 15945 (2020)
HPV ワクチン接種率の激減によって増加する子宮頸がん罹患・死亡者の推計人数(日本語で)
・The projected timeframe until cervical cancer elimination in Australia: a modelling study
Hall MT ら. Lancet Public Health. 2018 Oct 1. DOI:https://doi.org/10.1016/S2468-2667(18)30183-X
オーストラリアにおける子宮頸がんの撲滅までの予測される時間枠